タタ・モーターズは 1945年設立。インド乗用車市場でのシェアは約16%で、スズキ子会社「マルチ・スズキ」に次ぐ2位。もともと商用車に強く、2004年に韓国の大宇商用車を買収し、スペインのバス大手にも資本参加している。ニューヨーク証券取引所に上場した。フォード・モーター傘下の英高級車ブランド「ジャガー」「ランドローバー」を買収した。


タタ・モーターズとは

「タタ」がインドで格安の28万円カー発表。試作車

2008年1月

急拡大するインド市場を舞台に、自動車メーカーによる「超低価格車」の開発競争が過熱してきた。先陣を切るインドのタタ・モーターズは2008年1月10日、ニューデリーで開幕した自動車ショーで1台10万ルピー(約28万円)という低価格の試作車を発表。日産自動車、韓国・現代自動車などもシェア拡大をにらみ、続々と開発を表明している。

タタが披露した車の名称は「タタ・ナノ」。ナノは「微小」を示す英語で、その名が示す通り全長3・1メートル、幅1・5メートルと、日本の一般の軽乗用車より小さい。

タタ・モーターズによると、インドで爆発的にヒットした「マルチ800」(スズキの旧アルト)と比べると車の大きさ自体は8%ほど小さいが、中のスペースは21%ほど広いという。

軽より小さい

排気量は623ccあるが、2気筒エンジンで33馬力と、3気筒で50馬力以上ある日本の軽自動車よりも性能は劣る。ただ、「二輪車に毛がはえたようなものができるのでは」(日系大手メーカー)との予想とは裏腹に、外観は乗用車そのもの。最高速度は105キロ。エンジンの小型化に関連して新たな技術の開発にも成功し、特許も申請した。

1月10日、記者会見したタタ・モーターズのラタン・タタ代表は「二輪に子どもと妻を乗せて走る男性をみるたび、何か開発できないかと考えていた」と語り、二輪車のユーザーを主なターゲットにしていることを明らかにした。

2008年後半には生産を開始する予定で、将来は南米やアフリカへの輸出や現地生産も計画しているという。衝突安全基準や環境基準についてタタ・モーターズは「インドの基準は満たしている。コストはどれくらいかかるか分からないが、輸出する場合は当然、その国の基準に合わせていく」としている。

インドの乗用車市場は、スズキが20万~30万ルピー程度の小型乗用車でリードしてきた。2006年度の販売台数は138万台と2001年度から倍増した。

一方、車を購入できる所得層は、まだ全世帯の数%にとどまっている。4万~6万ルピーで購入できる二輪車の市場は約900万台もあり、超低価格車の潜在需要は大きい。

各社も参入へ

タタに続き開発を表明したのは仏ルノー・日産連合。カルロス・ゴーン社長は2007年10月、インドの二輪車大手バジャージ・オートと組み、2010年をめどに1台3000ドル(約33万円)の小型車を発売する方針を明らかにした。

バジャージのノウハウを活用して、製造コストを2500ドル(約27万円)に抑えるという。インドで販売台数3位の韓国・現代自動車も2007年11月、3000ドルカーの開発を表明。トヨタ自動車も新興国向け低価格車の開発を急いでいる。

日産のゴーン社長は「いま車を買えない国々の多くの客にアクセスできる」と超低価格車の意義を強調する。日本を除くアジアの新車販売は、この10年で1000万台増えるとの予測もあり、低価格車を武器にシェアを急拡大させるねらいだ。

とはいえ、巨費を投じて環境対応車を開発してきた日本国内メーカーからは「あの価格では欧米や日本の安全基準や環境基準は満たせない。発売されてもアジア限定だろう」「実際の商品デザインは試作車と大幅に変わるのでは」といった冷ややかな見方が出ている。

超低価格車の開発競争と一線を画すホンダは2008年1月10日、ニューデリーのショーで、2008年内にもインドでハイブリッド車「シビック」を発売する方針を表明した。


インド・タタ会長引退、英高級車買収で拡大、売上高20年で20倍

2012年12月

インド最大の財閥、タタグループのトップに20年あまり君臨したラタン・タタ氏が2012年12月28日、引退する。積極的に企業買収を進め、グループの売上高を20倍以上に増やした。一方、後継にはタタ家の出身ではない若手経営者のサイラス・ミストリー氏(44)が選ばれ、世襲が一般的なインドの財閥に新風を吹き込んだ。

後継は脱世襲の若手

「グループのビジネスにはもう関わらない。(大株主として)収益には関心を持ち続けるけどね」

タタ氏は最近、インドのPTI通信のインタビューでこう語った。75歳を迎える28日、グループの持ち株会社の会長職を辞め、名誉会長に退く。活動の拠点も、商都ムンバイに威容を誇るグループ本部「ボンベイ・ハウス」から別のビルに移すという。

清廉・直言の人

1991年に5代目トップに就任。英高級車ブランドのジャガーやランドローバー、欧州鉄鋼大手コーラスなど、企業買収による拡大路線を進めた。買収には200億ドル(約1兆7000億円)以上を費やしたと言われる。

一方で、「世界最安車」ナノの開発も主導。現場にどんどん口を出し、売上高1000億ドル、うち6割を国外で稼ぎ出すグローバル企業集団に育てた。三菱商事やNTTドコモといった日本企業もタタを提携先に選んでいる。

汚職がはびこるインドにあって清廉な人柄で知られる。「(インド以外の)ほとんどの国では製鉄所の建設許可を得るのに7、8年も待たされたりしない。これでは投資が他国へ逃げてしまう」とインドの行政手続きの不透明さを批判するなど、歯にきぬ着せぬ発言が話題を呼んだ。

大家族制が残るインドでは、財閥や企業のトップは世襲が一般的だ。クレディ・スイスのリポートによると、インドの主な上場企業の株式時価総額のうち家族経営の企業が占める割合は67%。「ファミリービジネス」の伝統が根強い東アジア10カ国・地域のなかで最も高かった。

「現代的な人選」

タタグループのトップもごく一時期を除きタタ家から出していたが、タタ氏は独身で子どもがおらず、後継者選びが注目された。グローバル化を踏まえ、タタ氏は「後継者は外国人もあり得る」と公言。グループ内外の識者を集めた委員会が人選を進めた。タタ氏の継母の息子の名前も取りざたされたが、2011年11月、大手建設会社を経営するミストリー氏が指名された。

ミストリー氏は、インドでもそれほど知られていなかった若手経営者だ。タタ氏は「ビジネスを分析する能力にたけている」と太鼓判を押す。タタ家の一員ではないものの、父親はタタグループの持ち株会社の大株主。急激な変化を避けた「軟着陸」という受け止めが大勢だ。経済史家のドウィジェンドラ・トリパティ氏は「大財閥が世襲されないほぼ初めてのケースだ。緩やかな変化だが、現代的な後継者選びへ一歩踏み出した。ほかの財閥でも、世襲の見直しが進む可能性がある」と評価する。


タタグループの概要

<売上高>

1000億ドル(約8.4兆円)

<上場企業の株式時価総額の合計>

879億ドル(約7.4兆円)

<グループ企業>

タタ・スチール(製鉄)、タタ・モーターズ(自動車)、タタ・コンサルタンシー・サービシズ(IT)、タタ・パワー(電力)など、100社以上

<従業員数>

45万人

<事業展開している国>

80カ国以上

<創業>

1868年

(売上高は2011年度。株式時価総額は2012年11月29日時点)


この車に注目!タタ自動車・ナノ インドの希望に輝く

2009年12月5日

「世界最安車」-2009年3月、インドの大手メーカー・タタ自動車が発表した10万ルピー(約19万円)の乗用車「ナノ」発売のニュースは世界を駆け巡った。7月に納車が開始されたが、その性能や安全性はいまだベールに包まれたままだ。

タタ自動車はラタン・タタ会長率いるタタ財閥の中核企業。ナノは日本、韓国メーカーが占めるインド国内自動車市場の主導権をタタ自動車が握るため、中間所得層を狙って開発した戦略車だ。全長3メートル、重量600キロ。排気量624CC。ガソリン1リットルで23・6キロを走行できるという。

低価格の秘密は徹底したコストダウンにある。ワイパーはフロントのみ1本、ドアミラーは運転席側だけなど必要最小限の装備以外は見事にそぎ落とした。ラタン会長は「新タイプの自動車を開発した」と胸を張った。

最新エコカーの機能美もスーパーカーの豪華さもナノにはない。しかし、これから車を持つインドの人々の「希望」をまとったボディーには不思議な輝きが確かにある。